ジャック・ベンベニスト博士の研究

「水の記憶」を示す“高度希釈実験”

「水の記憶」に直接的に関わる科学的実験結果を提示してきているジャック・ベンベニスト博士の業績について、解説します。

2002年6月2日にスイスのルツェルンで開催された「ウオーター・シンポジウム」にて。 向かって左からジャック・ベンベニスト博士、筆者、江本勝博士。

ただの水に顕著な治療例

そのための準備として、まず簡単にホメオパシーにおけるレメディについて説明します。

ホメオパシーにおいては、植物の抽出液などの薬効成分を含んだ原液を繰り返し水で希釈することによって、レメディと呼ばれる治療薬を作製します。

100倍希釈を30回繰り返して作られたレメディは30C、200回繰り返して作られたレメディは200Cなどと呼ばれます。30Cのレメディは実際には10の60乗倍、200Cの場合には10の400乗倍希釈されたことになります。

アボガドロ数(≒6×10の23乗)と呼ばれる定数を使った簡単な化学の計算から、コップ一杯程度の体積を持つどんな水溶液も、10の23乗倍程度希釈されると、元の薬効成分がいかなるものであれ、薬効成分の分子は、最大で1分子程度しか残っていないことが分かります。

従って、10の23乗倍を越えて、10の60乗倍もしくは10の400乗倍希釈して作られた30Cや200Cのレメディは、物質としては水そのものであって、原液の中に溶けていた物質は1分子も残っていない、と言うことができます。そして元の分子が1分子もないほどに希釈を重ねることを、“高度希釈”と呼びます。

もう一つ重要な操作として、レメディを希釈する際には、容器を強く叩くこと、即ち振盪することが必須であることもよく知られています。容器を振盪しないと、効力を持ったレメディを作ることができないのです。

ホメオパシー療法においては、“振盪”と“高度希釈”によって作られた実質上はただの水でしかないレメディを患者に処方するのですが、実際に顕著な治癒効果をもたらしています。従って、経験的事実として、「水にはかつて溶けていた物質の情報を記憶する性質がある」と考えざるを得ないのですが、その仕組みを従来科学で説明することができないために、ホメオパシーそのものに対しても懐疑的に捉えている科学者がたくさんいます。

“振盪”と“高度希釈”によって作られた“ただの水”が確かに生理的活性を持っているということを、試験管の中の反応系を使って初めて実験的に示し、専門家向けの科学雑誌上で堂々と発表したのがフランスのジャック・ベンベニスト博士です。

予想外の実験結果

70年代から80年代にかけて、ベンベニスト博士はパリの国立保健医学研究所にある研究室で、ヒトの血液から取り出した好塩基球と呼ばれる白血球の一種を使って、アレルギー反応を分析していました。好塩基球を入れた試験管の中にアレルギーの原因物質を添加すると、好塩基球は反応して細胞内の顆粒を外に放出します。この反応は脱顆粒反応と呼ばれています。ある種の抗血清(抗IgE抗血清)もこの反応を引き起こすことが知られており、ベンベニスト博士はこの抗血清を使って脱顆粒反応の性質について調べていました。

1981年~1982年頃、ベンベニスト博士の研究室にはベルナール・ポワトヴァンという名前の研究者がいました。彼はホメオパシー医でもあったので、抗血清を“高度希釈”した時にどういう結果が得られるかについて実験したいと言ってきました。

ベンベニスト博士は、当時ホメオパシーについてまったく知らなかったので、「君の好きなようにやってみたら。でも何も結果は出ないよ。高度希釈すれば、それはただの水だから」と言ったのでした。

抗血清を、通常用いられる濃度(10の3乗希釈程度)で作用させれば、過半数の細胞が脱顆粒反応を示すことは既によく知られています。常識的に考えれば、抗血清を希釈すればするほど、その効果はどんどん弱くなっていき、やがて完全にゼロになるはずです。すなわち図1のような結果が予想されます。

図1 好塩基球の脱顆粒反応に対する高度希釈した抗血清の効果(予想)

ところが驚くべきことに、実際に実験を行ったところ、図2の結果が得られたのです。通常用いられる濃度で効果があるのは当然ですが(10の3乗希釈のところにピークがあり、これを“低度希釈活性”と呼ぶ)、抗血清を繰り返し希釈していったにも関わらず、脱顆粒反応の割合が単調にゼロに近づいていくという結果にはならず、周期的に有意な脱顆粒反応が観察され、10の60乗倍希釈においてすらも、脱顆粒反応を引き起こす活性が認められたのです(“高度希釈活性”と呼ぶ)。

図2 好塩基球の脱顆粒反応に対する高度希釈した抗血清の効果(実際の実験結果) (Davenas et al. Nature, 333: 816-818, 1988より改変)

10の23乗倍を越える希釈倍数は、いわゆる“高度希釈”に当たり、理論的には元の抗血清の分子は1分子も存在していないはずです。にもかかわらず、脱顆粒反応が引き起こされています。グラフ横軸右端の10の60乗倍の希釈度は、ホメオパシーのレメディにおける30Cに対応します。

またホメオパシーのレメディを作製する時と同じように、希釈ごとに“振盪”することが必須でした。“振盪”しなかった場合には、“高度希釈活性”は観察されませんでした。

これらの結果にベンベニスト博士は困惑し、他の研究者にも同じ実験をさせましたが、若い学生のエリザベート・ダヴナや医者のフランシス・ボ-ヴェも同じ結果を得たのでした。彼らは人為的ミスを出来るだけ排除するために、盲検法を取り入れましたが、それでも相変わらず“高度希釈活性”が観察されたのでした。

科学誌の非科学的な態度

この画期的な実験結果をまとめて、ベンベニスト博士は、自然科学の分野でもっとも権威があると言われているイギリスのネイチャー(Nature)という学術雑誌に投稿しました。そして、2年に渡る審査を経て、1988年6月30日付けのネイチャーに論文は掲載され、世界中の科学者たちに衝撃を与えました。

ところがこの論文には前代未聞のネイチャー編集部による10行ほどの「但し書き」が付いていて、「この実験結果は従来の科学の理論ではまったく説明できないので、編集部としてはベンベニスト博士の協力の元に調査団を組織して博士の研究所に派遣し、実験の追試を行う予定である」という趣旨の文章が添えられていました。

これはネイチャー編集長のジョン・マドックスが考えたことであり、実は、調査団による実験の調査を受け入れることを前提条件として、ネイチャー編集部はベンベニスト博士の論文を受理していたのでした。

そして実際、「但し書き」どおりに、ネイチャー編集部が組織した調査団が7月4日から5日間に渡ってベンベニスト博士の研究室を訪れ、計7回の実験が行われました。

7回の実験のうち、最初の3回はベンベニスト博士が普段行っているのと同じ方法で実験が繰り返され、4回目の実験では盲検法が採用されました。これらの4つの実験においては、見事に“高度希釈活性”が再現しました。ところが残りの3回の実験においては調査団が実験操作に対しても大幅に介入し、大きな心理的圧力の元で実験が進められました。その結果なんと実験は失敗に終わり、「高度に希釈された抗血清の場合には脱顆粒反応が起こらない」、すなわち「ベンベニスト博士の今までの実験結果はまったく再現されない」という結論が出てしまったのです。

最初の4回の実験では再現性があったので、調査団としては慎重な態度を取る必要があったのですが、7月28日付けのネイチャーに、「高度に希釈した実験の結果は幻であった」という断定するようなタイトルのレポートが掲載されてしまいました。

この事態は大論争を巻き起こしました。ベンベニスト博士は反論を投稿しましたが、ネイチャー誌にはベンベニスト博士の実験結果を再現できないとする他の研究者たちによる論文が立て続けに掲載されました。数ヶ月の後には、一般の科学者のほとんどはベンベニスト博士の報告は間違いであったと考えるようになり、やがてベンベニスト博士自身は公的な職を追われ、研究資金も打ち切られることになってしまったのです。

1988年のネイチャー誌上における論文発表から、既に20年以上も経過している現在2009年においても、一般の科学者たちのほとんどが、ベンベニスト博士の“水の記憶”に関する実験結果はインチキであった、と考えているのではないかと思います。

ですが、ベンベニスト博士の実験結果について、今一度、真剣に考え直してみるべきではないかと筆者は考えています。

“高度希釈実験”から“転写実験”へ

一流の科学者が証明した「水の記憶」

前項で、「ベンベニスト博士の実験結果について、今一度、真剣に考え直してみるべきではないかと筆者は考えています」と書いた理由は以下の通りです。

  • 1970年代には、ベンベニスト博士は免疫やアレルギー反応の分野における一流の研究者として活躍しており、医学の教科書にも記載されている“血小板活性化因子”と呼ばれる重要な因子の発見者として国際的にもよく知られている。この研究分野において、ネイチャーで4つの論文を発表しており、ノーベル賞に2回ノミネートされている。そのような輝かしい経歴を持つ研究者が、“水の記憶”に関して、虚偽の報告をするということは考えにくい。
  • ネイチャーが1988年に論文を受理するまでに、ベンベニスト博士は、盲検法を導入した実験も含めて高度希釈実験を300回以上繰り返しており、再現性を確認している。またフランス以外の3つの国の研究所においても実験が再現している。
  • ネイチャーの調査団が報告した実験結果は、前回も触れたように大きな心理的圧力と懐疑的な雰囲気の下で行われた実験に基づいている。しかしながら、水の情報記憶に関する実験においては、関わる人々の意識やエネルギーの質によって結果が左右されることがあり得る。
  • “水の記憶事件”以降、他の研究者たちによって、ベンベニスト博士の実験結果が再現されないとする論文もいくつか発表されたが、“高度希釈活性”を確認した論文も発表されている。

従って、筆者としては、ベンベニスト博士の実験結果は、現時点において科学的に完全に否定されているわけではないと考えています。客観的に状況を判断すると、未だその真偽については決着が付いていないというのが正しい捉え方でしょう。

またベンベニスト博士の論文を丹念に読むと、以下のような実験結果が記載されていることが分かります。

  1. 抗IgE抗血清以外のいくつかの試薬を使った場合にも、周期的な“高度希釈活性”が検出された。
  2. “低度希釈活性”と“高度希釈活性”の性質には、以下のような違いがあることが分かった。
    1. 分子量1万以下の分子のみを通すフィルターで濾過した後の濾液を調べたところ、“低度希釈活性”は観察されなくなったが、“高度希釈活性”は観察された。
    2. 抗IgE抗血清を使った場合であっても、その他の試薬を用いた場合であっても、“高度希釈活性”は、以下の処理によって、一様に失活すること(活性が失われること)が分かった。
      • 70~80℃で1時間程度の加熱
      • 凍結融解(凍らせた後に溶かすこと)
      • 超音波処理
      • 磁気処理
    3. ベンベニスト博士は、好塩基球の脱顆粒反応の他に、モルモット心臓のランゲンドルフ灌流モデルに対するヒスタミンの作用、ヒト培養細胞のカドミウム耐性、珪素を経口投与することによるマウスの血小板活性化因子量の変化などの反応系において、“高度希釈活性”を見出している。

1 から、好塩基球の脱顆粒反応において“高度希釈活性”が観察されるのは、抗IgE抗血清に限るものではなく、より一般的な現象であることがわかります。

また、3 から(ちょっと難しい技術的用語が出てきますが、ここではそれらを理解する必要はありません)、好塩基球の脱顆粒反応以外にも、さまざまな生物学的な系において、“高度希釈活性”が観察されることが分かります。

すなわち 1 と 3 から、“高度希釈活性”は、ある特定の極めて限られた特殊な実験条件下でのみ観察されるものではなくて、広く観察される一般的な現象であるということなのです。

やや専門的になりますが、上記の 2-a と 2-b もまた極めて興味深い結果です。

2-a から、“高度希釈活性”を表している実体は、抗血清中の有効成分である抗体ではないことが再確認されます。なぜなら、抗体の分子量は約15万であり、比較的大きいので、分子量1万以下の分子しか通さないフィルターを通り抜けることができないからです。

同じ理由から、抗体の形状を水分子が(安定な構造として)立体的に模倣することによって、情報が保持されているのではない、ということも分かります。

物理的実体としては、分子量1万以下の大きさでありながら、抗体が持っている情報や機能を発揮することができるようになっていると考えられます。実験系の中に含まれている化学的な成分として、実際にもっとも可能性が高いと考えられるのは、水分子そのものです。

また、2-b から、“高度希釈活性”は、元の試薬が何であれ、いつもほぼ一定の温度範囲で失活することが分かります。もし有効成分として働いている個々の物質が関与するとしたら、その物質の構造や性質の違いによって、熱で失活する温度はそれぞれに異なってくるはずです(“低度希釈活性”については、実際にそのようになります)。

ですが、いつも一定温度で失活するのであれば、例えば液体の水を構成している水分子のネットワークが作り出すクラスター構造などが、情報の記憶に関わっているかも知れないことを示唆します。これらの水分子のネットワークは温度が上昇するとともに、一定の割合で壊れていくと考えられるからです。

凍結融解によっても失活するというのもまた、極めて驚くべき結果であって、多くの物質は凍結融解を行っても失活しません。ですが、水分子のネットワークに関わる微妙な構造であるならば、凍結融解で壊れる可能性があります。これについては、「雪解け水がもっとも健康によい」と言われることと関係がある可能性があります。

さらに、一定の磁場で失活するということからも、何らかの物質が関わっているのではなくて、水分子のネットワーク構造、あるいは水分子の集合体が作り上げる電磁場構造のようなものが関わっていることを示唆します。

多少、理解の難しい表現があったかも知れませんが、このように、論文の中に記載されている興味深い知見の数々を丹念にかつ総合的に読み直していくと、“高度希釈活性”に関連して、さまざまな性質が明らかにされてきており、ベンベニスト博士の実験結果が単なるでっち上げであるとは到底思えなくなります。

“転写実験”のアイデア

さて、ベンベニスト博士は、こうした一連の高度希釈実験を行っているうちに、特に、上に書いた 2-b の磁気処理によって“高度希釈活性”が失活する点に興味を持ちました。

そして電磁気学に詳しい同僚と議論を重ねた結果、磁気処理によって失われるような活性であるのならば、その活性そのものを電磁気的に記録することができるのではないか、という考えに至ったのです。

すなわち有効成分を含んでいる水溶液が発しているであろう電磁波情報を、コイルを使って“録音”することによって、記録することができるのではないか、さらにその情報をコイルを使って、ただの水に対して“再生”することによって、水に情報を転写することができるのではないか、と考えたのです。

この実験は、“転写実験”と呼ばれます。“高度希釈実験”よりも、“転写実験”の方が、実験系としてはきれいであり、結果の因果関係は明確です。

そして驚くべきことに、実際に“転写実験”を行ったところ、実験は成功したのです。

“転写実験”による「波動水」の効果の科学的証明

“高度希釈実験”の結果を記載した、1988年にネイチャーで発表された論文に対して、多くの批判や非難中傷を受けたベンベニスト博士は、フランスのパリ郊外にある国立保健医学研究所内の研究室環境を追われながらも、独自の研究体制を整えていき、1990年代以降には、ある意味1988年の論文よりもさらに驚くべき内容の実験結果を報告しています。

それは“転写実験”と呼ばれる実験であり、電磁気的な装置によって情報を転写した、いわゆる“波動水”が、実際に生物学的効果を持っている、ということを科学的に示す画期的な実験結果でした。

ベンベニスト博士が初めて“転写実験”に成功したのは1992年のことであり、“ランゲンドルフ灌流モデル”と呼ばれる単離モルモット心臓を使った実験系においてでした。その後、博士は、ヒトの白血球の一種である好塩基球や好中球などのさまざまな実験系を使って“転写実験”を繰り返していますが、ここではヒトの試験管内血液凝固系を使った実験結果について解説していきます。

試験管内血液凝固実験系

よく知られているように、外傷などによって身体から流れ出た血液は、数分間のうちに自然に凝固します。ですが、輸血用の血液が保存中に凝固してしまっては役に立たないので、血液が凝固しないようにする方法がいくつかあります。その一つがキレート剤と呼ばれる試薬を使って、血液中のカルシウムを除去する方法です。

カルシウムを除去した血液は凝固せずに、そのまま液体の状態で存在し続けます。そこにカルシウムを含む水を添加しますと、血液凝固のプロセスが進行し始めます。

さて、ヘパリンという生体物質はこの血液凝固を阻害することが知られています。一方、プロタミンという生体物質は、このヘパリンが持っている血液凝固作用を抑制することが知られています。すなわち、ヘパリンに加えてプロタミンが存在すると、血液が凝固していくのです。

これらの事柄はすべて医学においてよく知られていることであり、血液を採取して試験管の中に入れた状態でもまったく同様の現象が起こります。

全自動ロボットを用いた“転写実験”

ベンベニスト博士は、この血液凝固に関する試験管内実験系を使って、以下の驚くべき実験を行いました。

まずヘパリンとプロタミンの水溶液を用意します。水溶液の回りに“録音用”コイルを設置し、電気的な増幅装置を接続して、水に溶解した物質が発する(と考えられる)電磁波情報を、デジタル電気信号として取り出して“録音”します。“録音”されたヘパリンやプロタミンの情報は、コンピュータのハードディスク上に“音声ファイル”として保存されます。

これ以降の実験操作は、人の意識が干渉しないようにすべて全自動ロボットによって行われます。このロボットのアームは前後・左右・上下の3方向に自由に移動することができ、アームに取り付けられた自動ピペットの働きで、一つのチューブ(小さなプラスティックの試験管)から一定量の試薬を採取して、別のチューブに分注して攪拌したりすることができます(図3)。

図3 試験管内血液凝固実験のために作られた全自動ロボット

自動操作のアームが、ラックに並べられたプラスティック・チューブの中に、一定量の試薬を分注しているところ。アームの背後に見える円柱状のものが“再生用”コイル、向かって左端には血液凝固反応の進行を定量的に測定する分光光度計が見える。

この装置を使って、カルシウム水溶液が入ったチューブを“再生用”コイルの中に静置します。コンピュータの“音声ファイル”として記録されたヘパリンやプロタミンの情報がコイルを通して自動的に“再生”され、水に情報が転写されます。

あらかじめカルシウムを除去して凝固反応が進行しないように調整されたヒトの血漿成分(血液の上澄み成分)に対して、(1)何も情報を与えていないカルシウム水溶液を添加したもの、(2)“再生用”コイルを使ってヘパリンの電磁波情報のみを転写したカルシウム水溶液を添加したもの、(3)ヘパリンとプロタミンの両方の情報を転写したカルシウム水溶液を添加したもののそれぞれが、全自動ロボットの働きによって添加されていきます。

血漿が凝固していくと溶液が濁りますが、その濁りの程度が分光光度計によって自動的に測定されていきます。そして測定結果は自動的にコンピュータに記録されていきます。

図4に典型的な実験結果を示します。情報の転写されていない単なるカルシウム水溶液を使った対照実験の場合には、添加されたカルシウムの働きで凝固反応が開始し、約20分で凝固反応が終了します。一方、ヘパリンの情報を転写したカルシウム水溶液の場合には、凝固反応が著しく阻害されていることが分かります。ヘパリンとプロタミンの両方の情報を転写したカルシウム水溶液の場合には、ヘパリンの血液凝固阻害作用が打ち消されます。対照実験と比べると、数分間、反応の進行が遅れるようですが、約25分後には対照実験と同様に、完全に血液が凝固することが分かります。

図4 試験管内血液凝固反応系を使った転写実験の結果 (http://www.digibio.com/cgi-bin/node.pl?nd=n8を改変)

“デジタル生物学”の提唱

これは誠に驚くべき実験結果であり、「水は直接物質に触れなくても、物質の波動情報を含んだ電磁波を“受信”することによって、その物質の情報を記憶することができる」「水は記憶した情報を“送信”することによって、外界に影響を及ぼすことができる」ということを示しています。

この実験結果に基づいて、「物質と物質との間には直接の接触がなくても、水が仲介することによって物質が持っている波動が互いに影響を及ぼしあい、物質は遠隔的に相互作用することができる」と博士は考えています。

一方、現代の生物学・医学・薬学においては、「物質は相手の物質との間に物理的な接触があって初めて、その作用を相手に伝えることができる」とされており、この考え方は “鍵と鍵穴仮説”とも呼ばれています。

ベンベニスト博士が、“転写実験”で証明したことは、“鍵と鍵穴仮説”が間違いである、ということです。“鍵”は、“鍵穴”に物理的に差し込まれなくても、遠くからでも“鍵穴”に影響を及ぼして、“扉”を開けることができるのです。

そして、“鍵”の情報が“鍵穴”に伝わる時の媒介として、水が決定的に重要な役割を果たしている、ということなのです。

これこそが、現代科学一般においてパラダイム・シフトを引き起こす可能性を秘めているベンベニスト博士の作業仮説です。これらの新しい概念を総括して、ベンベニスト博士は“デジタル生物学”というものを提唱しています。

図5 従来理論の「構造適合論」(左図)とベンベニスト博士が提唱している「電磁信号論」(右図)

“転写実験”にまつわるエピソード

全自動ロボットを使った転写実験にまつわる一つのエピソードがあります。ベンベニスト博士は、時として転写実験がうまく行かなくなることに気がつきました。その時の実験条件について徹底的に吟味した結果、一つの仮説が浮かび上がりました。

それは、ある女性研究者が実験に関わっていると実験が失敗するが、その女性が関わっていないと実験は成功する、ということでした。もちろん、その女性が悪意を持っているわけではなくて、本人の意志とは無関係に、彼女が実験に関わると実験が失敗するということでした。

この仮説を証明するために、ベンベニスト博士は、この女性にホメオパシーのレメディを握ってもらうことにしました。するとたったの五分間で、レメディの効力が完全に失われることが分かりました。

その仕組みについては、まだまだ解明されていませんが、水に含まれている情報を完全に消去してしまう特殊な波動的性質を備えた人間がいる、ということが分かったのです。こうした性質を持っている人は、“周波数撹乱者”と呼ばれています。

もう一つ、逆の方向のエピソードがあります。“周波数撹乱者”からの影響を排除するために、装置全体に対して外部からの電磁波から守るシールドを設置したところ、またまた実験がうまく行かなくなってしまったのです。

これはマイナスの影響というよりも、何らかのプラスの影響が排除されてしまったためではないかと考えられました。

そこでベンベニスト博士はシールドを開けて、長年にわたって研究室の責任者を務めている一人の男性に実験装置の前に立ってもらうように指示しました。すると実験が再び成功するようになったのです。

しかしながら、この人物にいつも実験に立ち会ってもらうのも大変なので、何か他に方法がないかと考えたベンベニスト博士は、水を使って以下のことを試みました。

すなわち、この男性のポケットに水の入った試験管を二時間ほど入れておきます。この男性のエネルギーが込められた試験管を装置に取り付けて、その後に装置全体にシールドを設置しました。すると、装置のそばにこの男性がいなくても、実験は毎回成功するようになったのです。

ベンベニスト博士の業績

ベンベニスト博士は、二重盲検法を含む実験を何百回となく繰り返して、“高度希釈実験”と“転写実験”のいずれにおいても、その結果が陽性であること(これらの現象が実際に起きていること)を示してきています。

残念ながらベンベニスト博士は2004年に心臓病で亡くなられました。享年69歳でした。そして、現時点においてさえも、大多数の科学者たちの間では、ベンベニスト博士の業績は認められていませんが、筆者は遅かれ早かれ、その趨勢は逆転するであろう、と考えています。

それがいつになるのか、またどういう形で状況が変化していくのか、予測することは難しいですが、真実は必ず明らかになることでしょう。

文献

  • “Human basophil degranulation triggered by very dilute antiserum against IgE”, E. Davenas, F. Beauvais, J. Arnara, M. Oberbaum, B. Robinzon, A. Miadonna, A. Tedeschi, B. Pomeranz, P. Fortner, P. Belon, J. Sainte-Laudy, B. Poitevin and J. Benveniste, Nature, 333: 816-818 (1988)
  • “’High-dilution’ experiments a delusion”, J. Maddox, J. Randi and W.W. Stewart, Nature, 334: 287-290 (1988)
  • “The Memory of Water”, Michel Schiff, Thorsons (1994)
  • “Ultra High Dilution – Physiology and Physics”、Edited by P.C. Endler and J.Schulte、Kluwer Academic Publishers (1994)
  • “Activation of human neutrophils by electronically transmitted phorbol-myristate acetate”, Y. Thomas, M. Schiff, L. Belkadi, P. Jurgens, L. Kahhak and J. Benveniste, Medical Hypotheses, 54: 33-39 (2000)
  • “Homeopathy Research – An Expedition Report”、P.C. Endler、EDITION@INTER-UNI.NET (2003) “フィールド 響き合う生命・意識・宇宙”、リン・マクタガート著、野中浩一訳、河出書房新社(2004)
  • “真実の告白 水の記憶事件”、ジャック・ベンベニスト著、フランソワ・コート編、由井寅子日本語版監修、堀一美・小幡すぎ子共訳、ホメオパシー出版(2006)
  • “意思のサイエンス 考えるだけで人生が変わる”、リン・マクタガート著、早野依子訳、PHP研究所(2007)